子どもの葛藤をユーモラスに描いた絵本『やきざかなののろい』

絵本:『やきざかなののろい』
作:塚本やすし
対象年齢:4歳~8歳
ページ数:本文31ページ
文字数:951字
読み聞かせ:7分くらい
5歳児音読:15分
カテゴリー:ユーモア
テーマ:やきざかなをめぐる子供の葛藤

【表紙】

タイトルに「のろい」とあるだけあって、表紙の背景はまっ黒。

そこにやきざかなの、くりくりの大きな目玉とおかしらが、口を半開きにしている。

大胆な筆づかいで、やきざかなの線が描かれているが、それとは対照的に、焦げた魚の焼き具合も繊細に描かれているので、なんだかおいしいそう。

裏表紙も開いて、表紙と合わせてみると、一匹のやきざかなの姿があらわれる。

【作者】

作者の塚本やすしさんで知っているものは、『とうめいにんげんのしょくじ』のようなユーモラスなものから、『むらをすくったかえる』のような考えさせられるものまで、幅広い作品を出しています。今回紹介させて頂く『やきざかなののろい』では、第六回リブロ絵本大賞(2015年)を受賞しています。

【タイトルページ】

タイトルページをひらくと、表紙と同じ真っ黒な背景色が。そこに食卓に白ごはんとやきざかなの姿焼きが並んでいて、ほっかほっかの湯気が立ち上がっている。とてもおいしそう!と思いきや、その食卓を前に、男の子がうつむき加減に、浮かない顔をして押し黙っている。すでにストーリーが始まっているのです。

【あらすじ】

1ページ目を開くとのっけから、

「ぼくは、やきざかなが きらいです。」

ああ、タイトルページの男の子は、やきざかなが嫌いなんだ。
やきざかなが嫌いな男の子の物語が始まるんだ、とすぐに引き込まれるような書き出し。
じゃあ、嫌いな理由は?

「ほねが あって たべにくいし、にがいからです。」

なるほどなるほど。やきざかなが嫌いな子どもたちの代表的な理由だ。

僕は、石川県の日本海沿岸地域に生まれ、小学校四年生ごろから毎週末、父親と近所のおっちゃんたちと地引網をして育ったので、魚は大好きになりました。朝5時、6時ごろから、船で網を張り、浜小屋のウインチで縄をひき、小一時間ほどしたら、みんなで網を手で引っ張る。たくさんの活きのいい魚が網の外へ飛び上がろうとする。子供の役目は、その網の外側に石を投げて、魚が逃げないようにする。ようやく浜にあげられた魚は、僕の父と網もちのおっちゃんが出刃包丁ですばやくさばき、その場で食べる。大人たちは朝から酒を酌みあい、宴が始まる。

秋になると、脂ののったカマスなどの魚を浜で焼き、焼きたてを口に放り込む。潮騒を聞きながら、塩っぽい浜風をうけて食べる焼き魚は極上の味わい!
僕の父親は、説教くさいことは何一つ言いませんでしたが、箸の使い方だけはよくよく教えてくれました。近所のオヤジたちが集まるうどん屋(その実、居酒屋)によく連れていってくれて、おかみに、豆の入った皿と空っぽの皿を出してもらい、僕に大人の箸を持たせ、豆をつまんでは空皿に移す、というトレーニングをよくさせてくれました。うちの家族は焼き魚を食べさせたら、身がほとんど残らないほど、食べるのが上手な家族です。僕の箸の師匠だった父も去年なくなりました。

今の子供たちは、おそらくパン食が多かったり、フォークで食べる洋食だったりと、箸を使い慣れていないのかもしれません。箸が使えないと、姿焼きの小骨とりは難渋しますよね。この物語の「ぼく」も、箸を使うのが苦手なようです。

やきざかなが嫌いな「ぼく」は、食べたふりをするため、やきざかなを箸でつついたりしますが、あちらこちらに身が散らかり、お母さんに怒られてしまいます。夕食後のおふろに入っていると、さっき食べ散らかしたやきざかながお風呂に入ってきて、

「きらわないでくれ~
ちゃんとたべてくれ~」

としゃべるのです!
それから毎日のように「ぼく」につきまとう、やきざかな。あまりにしつこいやきざかなの追求に大激怒した「ぼく」。するとやきざかなも逆ギレしてしまい、とうとう「ぼく」を食べようとする!あやうし「ぼく」!

キャラクター】
●やきざかなが嫌いなぼく
●おかあさん
●やきざかな
●のらねこ

【読み聞かせ】

やきざかながし「ぼく」につこくつきまとい、なんどもなんども言うセリフ、

「きらわないでくれ~
ちゃんとたべてくれ~」

を上手に演出して読むのがコツ。食べられるのが本望と思っている「やきざかな」なのに、食べてくれない「ぼく」に苛立ちながら遂には腹立つ気持ちを上手く声で演出しながら子どもに読んであげると、物語への引き込まれ方が違うと思います。

【日本語クラスでは】

トロントの日本語クラスでこの絵本を読ませたところ、たいへんウケが良かったです。面白いのは「やきざかな」の文化の違い。ここカナダでは大ぶりのサーモンの切り身をバーベキューで焼いて食べるのが一般的で、スーパーで買ってくる時点で頭も尾っぽもなく、小骨すら除去された切り身で購入されます。どうやらレストランでも出された魚に小骨があったら、訴えられるかもしれないくらい、骨のない料理方法です。箸を使わない文化だと、食卓に出されるプレゼンも違うのですね。僕のクラスでは、日本の姿焼きの写真をたくさん見せました。旅館で出される金目鯛の塩焼きや、定食屋で出されるサンマ定食。生徒たちは驚いていました。極め付けは、マグロのお頭焼きの写真を見せると、嗚咽の声をあげていました。焼き魚をめぐる文化の違いも勉強でき、クラスのテキストとしてもとても良かった一冊です。

【語彙20】

やきざかな、ほね、びっくり、のらねこ、
きらい、残念、きれい、
にがい、しつこい、うるさい、食べたい
ふりをする、(食べ)散らかす、つっつく、怒る、
逃げる、叫ぶ、食べられる(食べる)、転がる、飛ぶ

本書は、やきざかなが大好きなお子さんは勿論のこと、
やきざかなが大嫌いなお子さんに特にオススメです。最後まで読んでいただくと、

「ああ、『のろい』って、そういう意味なんやあ」

っていう「味付け」もしてあります。

子どもの葛藤をユーモアたっぷり描いた、とても楽しい良書です。

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日本語クラスの型(17)継承語教育としての漢字習得プログラム(4)漢字の宿題

前回は、僕の日本語クラスでは、

漢字は個別のプログラム体系でカリキュラム化し、

「98部首カルタ」というものを使って、

遊びながら、視覚的にインプットさせる方法を述べました。

今回は、クラスアクティビティで脳内にインプットした情報を、

宿題という形でアウトプットさせてみましょう。

さて、僕のクラスでは1ヶ月4回の授業で、同じカテゴリーの部首群を学習します。

11月なら「足」に由来する部首7個を、

その部首からできる漢字20個を、

繰り返し繰り返しカルタで学ばせます。

その後習った中から部首5個、漢字5個を宿題に盛り込みます。

宿題には、部首ができたもとの絵が描いてあり、

生徒は★選択肢の中から、それぞれ正しい部首を選びます。

さらにその部首からできた漢字を☆選択肢から選びます。

☆の漢字はまず訓読みを選び、その後二字漢字(音読み)を選びます。


部首の中心的な視覚的イメージがわかれば、

意味のイメージも類推できると信じてやらせています。

クラス内授業では、いっさい漢字を書かせていません。

カルタで遊ばせるだけです。

しかし宿題で生徒たちは、選択肢の漢字を見よう見まねで書いてきます。

僕は、書き順など問いません。字のキレイ汚いなど二の次です。

毎週、必ず漢字小テストをします。

5個の漢字を書かせるものですが、同じ内容のもの2枚のテストに、

1枚は部首を書かせ、もう1枚には部首以外のつくりなどを書くテストです。

宿題をやっていれば、答えられるものです。

また4週に一回、漢字パズルもやらせます。

これは部首と旁(つくり)、を分解してあるものを、

生徒たちにパズルのようにつなぎあわさせます。


このように、宿題と小テストとして、漢字を20個(4週)を学ぶことになります。

一年9ヶ月で180個。5年間続ければ900字、教育漢字数1,006字89%に到達します。

悪くない数字だと思います。

僕の、漢字習得プログラムに対する目標を再びここにあげてみます。

●国語教育ではなく継承語教育である
●漢字個別のプログラムである
●書き順は問わない
●視覚的学習プログラムである
●知識積み上げ式である
●反復練習できる
●アクティビティがメインである

うまくすべて網羅できているのではないでしょうか。

問題点はいくつかあります。

●読み書きに弱い子(ひらがな、カタカナも読めない子)は宿題にとりくまない。
●音読みのフォローが弱い。将来的に108形声カルタが必要か。
●漢字1つ1つの意味をフォローしていない。視覚的イメージに偏っているか。
●より確かな漢字の意味の定着のためには、各種ドリルワークが必要か。

まだやり始めたばかりの漢字習得プログラムです。

学習体系は随時、修正が必要でしょう。

生徒たちの習得状況を引き続きウォッチしていきたいと思います。

(つづく)

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日本語クラスの型(16)継承語教育としての漢字習得プログラム(3)98部首カルタ

前回、わが継承語学校JSL(第二言語としての日本語)クラスには、

「漢字個別のプログラム」が必要、との認識を述べました。

その理論的基礎を『漢字はみんな、カルタで学べる』伊東信夫、宮下久夫著

から見つけたこともお話ししました。

今回はこの本を使って、僕が日本語クラスで実践していることをお話しします。

101漢字カルタ、98部首カルタ、108形声カルタ

の3つのうちから「98部首カルタ」を採用しました。

理由は前回も書きましたが、

この98の部首から、常用漢字の1,681字(86%)もできているからです。

授業内では、これら1,681字すべては、とうてい教えられないですが、

その基礎となる98の部首は教えられます。

この98の部首をカルタという遊びで学習し、漢字の成り立ちに興味をもってもらい、

結果、生徒たちの自学自習を誘う、というのが僕の信心です。

それでは、どのように運用しているか具体的に示してみましょう。

伊東、宮下氏によれば、98部首カルタは11のカテゴリーに分けられます。

1ヶ月1カテゴリーの部首をやるとして、うちの日本語学校は9ヶ月あるので、

11を9カテゴリーに圧縮します。

①「人」(11個)・・・にんべん、欠、やまいだれ等
②「手」(9個)・・・又、支、むちづくり、てへん等
③「足」(7個)・・・止、しんにゅう、あしへん等
④「体」(11個)・・・目、臣、おおがい、みずから等
⑤「神ことば」(4個)、「植物」(5個)・・・言、示、木、禾など
⑥「動物」(10個)・・・鳥、羊、貝など
⑦「自然」(11個)・・・日、氵、石など
⑧「家町」(10個)・・・宀、門、おおざと等
⑨「道具」(16個)・・・糸、衣、刀など

この9カテゴリーの部首群を9ヶ月で学習するカリキュラムを作りました。

そしておおよそ3つのアクティビティをクラス内でやります。

部首カルタ
部首識別カルタ(20枚)
部首神経衰弱ゲーム

例えば11月は③「足」の部首をやりました。

【部首カルタ】

7つの足に関する部首カルタ(とり札)を場に並べます。

教師がよみ札の絵を見せながら、唱えうたを読みます。

「左足 ぐっと立ち止まる 止(とめへん)の字」

とよみ札の言葉を読みながら以下のような絵札を見せます。

生徒たちは、絵札の絵と似通った、とり札にある古代文字を探します。

ひとりの生徒が「止」のとり札をタッチしました。正解です。

このように部首カルタのとり札をすべて取らせたあと、次は逆をします。

絵札(よみ札)を場に並べ、とり札を見せ、よみ札を取らせるのです。


【部首識別カルタ】

このように「足」に関する部首7個に触れさせたら、

今度は、この部首からできた漢字が書いてあるカルタ20枚を一枚ずつ見せ、

その部首を答えさせるというアクティビティです。

足に関する部首からできた漢字には、

「歩、武、道、通、路、踊、起、超、発、登、夏、変、違、衛」

などがあります。

すでに部首カルタをやっているので、これら漢字カルタをみせれば、

漢字の意味はわからなくとも、漢字の形から、部首を探し当てることができます。

漢字カルタを見せた時に、補足程度に漢字の意味は伝えます。


【部首神経衰弱ゲーム】

最後に20個の漢字カルタをうつ伏せにして場に並べて、

同じ部首の漢字をとる、というゲームです。

繰り返し繰り返しゲームすればするほど、モンタージュ写真のように、

部首(へん)-旁(つくり)、部首(かんむり)-脚、部首(かまえ)-なか、

などの組み合わせを脳内でつなぎあわせながら、漢字の形を覚えていけます。




僕のクラスでは、漢字が全く書けない生徒でも、このゲームをしたがります。

このように、漢字の部首を、絵、古代文字、そして部首と

パズルのように脳内でつなぎあわせ、

視覚的に覚えた部首と、それからできた漢字を

モンタージュ写真のようにつなぎ、離し、修正しながら記憶させていきます。

このアクティビティに40分ほどクラス活動に当てます。

ここに漢字を書かせる要素は全くありません。

漢字を視覚的に、パズルのように、モンタージュ写真のように

記憶に刷り込ませる活動です。

書く要素はすべて宿題に盛り込みます。

(つづく)

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日本語クラスの型(15)継承語教育としての漢字習得プログラム(2)漢字個別の学習体系が必要な理由

日本語を継続して学習するには、漢字学習は不可避です。

しかし継承語学習者にとって最大の障害は漢字学習です。

この問題にどう対峙すればいいのでしょうか。

まず「漢字個別のプログラム」が必要です。

どういうことかと言いますと、

以前は、テキストから語彙を拾い、そこから習うべき漢字を抽出してました。

しかしこのやりかたのデメリットは、漢字の知識が蓄積されないことです。

テキストから漢字を抽出していると、

前に習った漢字と、今習っている漢字に何の共通点もないので、

生徒の頭には、漢字知識が積み上がっていきません。

このやりかたでは、暗記するしか方法がありません。

国語教育では、このやり方でもいいかもしれませんが、

継承語教育では、このやり方は全くダメです。

国語教育では、教育漢字(1,006字)にのっとって、

小学校で習うべき漢字が学年ごとに定められています。

国語の教科書もこれにのっとり、漢字がチョイスされてるはずです。

しかし、継承語教育、なかんずく僕のJSL(日本語が第2言語)クラスでは、

まず真っ先に、テキスト選びに困難を極めます。

学年がバラバラ、日本語レベルもバラバラ、ニーズもバラバラな中、

統一したテキストを選ぶのは、不可能に近いからです。

「テキストから漢字を抽出するやり方は捨て、漢字個別の学習体系が必要だ」

そう思いました。

ここで自分の考えを書き出してみました。

継承語教育クラス、特にうちのクラスのように、
漢字が苦手な生徒たちに効果的な学習体系があり、かつ面白く、
学習意欲を掻き立てるようなプログラムはできないか?

●国語教育ではなく継承語教育である
●漢字個別のプログラムである
●書き順は問わない
●視覚的学習プログラムである
●知識積み上げ式である
●反復練習できる
●アクティビティがメインである

さて、どうしたものかと色々文献にあたっていると、

幸運にも、一冊の本に出会いました。

『漢字はみんな、カルタで学べる』伊東信夫、宮下久夫著。

この本のプロローグにはこうあります。

「もともと、漢字のしくみにそくして学ぶなら、漢字ほど学びやすいものはなく、漢字ほど学んでおもしろいものはないのです。それにまた、漢字ほど遊びで楽しく学べるものはないのです。漢字とはそのような性質をもった文字なのです。」(p10)

漢字学習のプロセスを、ここまで肯定的に述べたものを見たことがなかったので、

とても驚きました。と同時に興奮しました。

「漢字の成り立つしくみにのっとって遊びで楽しく漢字を学ぶために、わたしたちは、つぎのような三つのカルタを考案しました。」(p10)

【101漢字カルタ】
【98部首カルタ】
【108形声カルタ】

つまり、書き順がどうのこうとか、

テストのために暗記して覚えなきゃなんないとか、

強制的非生産的な手段で学習するのではなく、

「漢字の成り立つしくみにのっとって」遊びながら学べるなら、

子どもは「自学自習にすすみだす」というわけです。

この考え方は僕のそれと全く合致していました。

ここにカルタそれぞれの特徴を書きます。

【101漢字カルタ】
絵と唱えことばがある101枚の「よみ札」と、古代文字とそこからできた漢字がある101枚の「とり札」で構成。日本の常用漢字1,945字のうち、単体の文字は270個(全体の14%)。この270個から代表的なものを101個抽出している。さらにこの中から78個が「部首」になる。その78個の部首で1,337字が作られている。これは常用漢字の実に69%をしめている。

【98部首カルタ】
部首とは漢字を構成する親となるもの。部首は220個ほどあるが、そこから主要なもの98部首を選定。この98部首から1,681字ができあがる。常用漢字の実に86%だ。ほとんどの漢字は、2つ以上の基本漢字のあわせ漢字なので、ここで部首を学ぶことで、漢字全体の世界観が学べる。

【108形声カルタ】
「形声」文字とは、部首(意味記号あるいは音符)と音符(音記号)の2つの部分からできているもの。例えば「白」を音記号としてみれば「ハク」と読む。ここからできた漢字は「宿泊」「船舶」「迫力」「拍手」「紅白」と「白」がついた漢字は「ハク」と音読みする。その漢字を知らなくてもこの音記号を知っていれば、その読み方となる鍵がわかる。漢字全体で約300個ほどの音記号があるが、そこから108個を厳選。

僕の日本語学校は、週末のみでイベント等も多く、

50分1コマとして、1年に70コマしかありません。

上記すべてのカルタをやってみたいところですが、

漢字ばかりにそこまで時間を割けません。

そこでこの中から98部首カルタをやってみようと思いました。

98部首から1,681字、常用漢字の86%ができているということで、

授業ですべての漢字をフォローできなくても、

将来的に子どもたち自身が自学自習できる基礎を

クラス内で提供できることはとても大切だな、

と思ったからです。


(つづく)

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日本語クラスの型(14)継承語教育としての漢字習得プログラム(1)漢字はなぜ必要か?

日本語クラスの型をたずねて三千里。

Guided Reading Method を勉強し、

言語テキストとして「絵本」の重要性を再認識し、

「音読」を授業の中心にすえる。

その絵本から語彙を抽出して「語彙カードゲーム」を作る。

そのカードゲーム・アクティビティで「語彙」の獲得を図り、

さらに「モノポリー-日本語を学ぼう」ボードゲームで、

語彙の定着化、文法の学習をする。

これで日本語クラスの型の中心と右翼はそろいました。

それが「音読、語彙」です。

もう1つ大事な左翼は「漢字」です。

日本語を継続して学習するためには、漢字の学習は欠かせません。

でも継承語教育において、生徒たちが学習を辞めてしまう最大の理由は

漢字学習の困難さなんです。

特に表音文字であるアルファベットを母語とするこちらの児童には、

たった一文字にたくさんの画数があるのは解せません。

日本語母語話者である私たちだって、実は思っているでしょう、

パソコンでタイプすればパッと出てくるから良いものの、

書くとなればなんとも面倒くさい漢字の画数。

「のむ」の漢字は「飲」む。

表意文字としては「飲」は「の」しかカバーしていないのに、

「飲」は書くのに12画もある。

さらに国語教育上ならば、漢字の書き順もうるさく言うでしょう。

しかし、僕は思います。

継承語教育は、国語教育とは違います。

継承語教育の底辺から鑑みれば、「漢字は読めれば良い」のです。

極論いえば、書けなくてもいいのです。

そもそも漢字は「表意文字」です。

読み書きに必要な文字なのであって、話し聞き上は問題にならない。

文章に「飲む」という文字が出てくれば、読めなければ困りますが、

会話で「のむ」と聞きとることができ、その意味がわかれば、ここに漢字は必要ない。

しかし、です。それでは、

「わかる」という言葉は分かっても、

「リカイ」するという言葉は分からなくなります。

なぜなら「リカイ」という言葉は書き言葉であり、漢字由来の言葉だからです。

漢字を勉強しない、漢字を書かない、本を読まない、ということは、

「リカイ」という語彙に出会わない、知らないということです。

こういった書き言葉は、漢字由来の言葉であり「抽象語」が多い。

日本語上の「抽象」的な概念は、「リカイ」という表音文字だけではなかなか解せません。

ところが「理解」という表意文字、つまりそれぞれの漢字を知っていれば、

意味を推測することができます。

このように、話す聞くなどのシーンでは漢字は一見いらないように思えるが、

読み書きのシーンでは、漢字が読めないと話にならない。

そしてその漢字からできる言葉には、日本語の抽象語が大変多い。

日本語を学ぶ上で、漢字を学ばないと、語彙が増えないばかりか、抽象語も獲得できません。

抽象語が獲得できないと、学習言語が育ちません。

合計(算数)、蒸発(理科)、気候(社会科)など、学校で勉強する語彙は学習言語であり、抽象語です。

日本語のシステム上、漢字を勉強しない、抽象語を知らないということは、

日本語でアカデミックな概念理解ができない、読書ができない、思考力が上がらない

という結果を招きます。

継承語教育においても、漢字学習はとても重要です。

でもあまりにも学習負荷が高すぎます。

だから学習継続に困難を感じて、日本語習得を断念してしまうのです。

この問題を日本語教師として、どのように対処すべきなのか。


(つづく)

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日本語クラスの型(13)語彙と文法のアクティビティ具体例(4)モノポリーで日本語を学ぶ

前回は、絵本から抽出した20個の語彙を使って語彙カードを作り、

語彙カルタ
語彙ストーリー

というカードゲームを紹介しました。
前回の記事➡︎「日本語クラスの型(12)語彙と文法のアクティビティ具体例(3)語彙カードゲーム」

語彙カルタは、音読したテキストから語彙を獲得するアクティビティ。

語彙ストーリーは、獲得語彙を再び物語としてつなぎ合わせることで語彙の定着化を図るアクティビティ。

今回は、その語彙カードを使って、さらに言葉と言葉をつなげるルール、

つまり文法も、ゲームをして覚えちゃおうというアクティビティの紹介です。

その名もズバリ「モノポリー-日本語を学ぼう」

モノポリーの名前を知らない人はいないんじゃないか、

というぐらい市民権を得ているボードゲーム。

いまやスマホでアプリがあるくらい裾野が広がっています。

北米発のこのボードゲームは、ここトロントのうちのクラスでも

生徒たちには「やったことがある、楽しいゲームだ!」

と好評でした。

これをアレンジして語彙と文法が学べるボードゲームを作る!

ええっ!でもどうやって⁉︎

作っちゃいました。ヒマ人です(笑)

◉モノポリー-日本語を学ぼう

このゲームは、1番たくさんの語彙カードを集めた人が勝者です。

つまりよりたくさんの語彙を獲得した者が勝つことができます。

●各プレイヤーに語彙カード3枚ずつ配る。
●配られたカードはオープンして自分の手元に置く。
●プレイヤーは自分のコマを選んで「Go」のマスにコマを置く。

✴︎なお、文法の可視化については、
   新宿日本語学校の実用新案【 Ezoe Teaching Method 】(江副文法) を使っています。







(つづく)

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お父さんにこそ読んでほしい絵本『じごくのラーメンや』

絵本:『じごくのラーメンや』
作:苅田澄子
絵:西村繁男
対象年齢:3〜8歳
ページ数:本文31ページ
文字数:1,658文字
読み聞かせ:6、7分
5歳児音読:15分(ちょい難)
カテゴリー:ユーモア
テーマ:じごくに救いはあるのか⁈

【お父さんにオススメ】

この絵本は、お父さんにこそ読み聞かせしてほしい一冊です。
なぜなら物語のキーをにぎる「えんまさま」は、
お父さんの、低い、のぶとい声で演出してほしいからです。

【表紙】

表紙には、ニッカニカの笑顔で、ラーメンを両手で「どうぞ」のしぐさの閻魔さま。後ろには、そのラーメンを調理している鬼たち。ラーメンには真っ赤なスープが入っていて、見るからに辛そうだが、アツアツの湯気がどんぶりから立ち上がり、なんともおいしそう!
タイトルに「じごくの」とあるが、なにか楽しさを醸し出しているこの絵本。

【作家情報】

絵は、『がたごとがたごと』や、大作『絵で見る日本の歴史』で有名な絵本作家・西村繁男さん。大御所であるにもかかわらず、こういうユーモア路線も描くんだ、とちょいとびっくり。
「じごくのラーメンや」は、続編も企画されているそうです。

【タイトルページ】

タイトルページを開くと、赤鬼が、ラーメン屋ののれんをくぐって、「いらっしゃい」と手招きしている。が、いかんせん顔がいかつい鬼なので、こちらとしては、入りにくい感じが。

【軽くあらすじ】

ページをめくるとやっぱり、鬼たちがにんげんたちを痛めつけるじごくの世界が見開き2ページにわたって、描かれている。
子供に読むときは、
「ウソついたらこうやって舌ぬかれるんやぞ」とか
「ワルいことしたら、はりやまをあるいたり、ちのいけに入って鬼にいじめられるんやぞ」
と地獄の絵を見せながら、ここで軽く怖がらせてやると、しつけ効果も期待できますし、
物語的にも、あとのギャップがより効果的に楽しめるんじゃないでしょうか。

鬼のいじめに疲れたにんげんたちがこうつぶやく。

「てんごくに いってみたいなあ。」
「おいしい おかしが いっぱい あるんだって」
「ここには なんにも ない」
「じごく だーいきらい」

するとそれを聞いたえんまさまが、なぜだかかんかんに怒りだす。
てんごくが甘いものなら、こっちは激辛で勝負だ!
間違ったギアが入り、「じごくめいぶつ・ちのいけラーメン」を作る。
だれも食べられないはずだが、なぜか大行列を作って大人気となり、においは天国のほとけさまにもとどき、物語は予想を超える展開に!

【キャラクター】

●じごくのにんげん
●おに
●えんまさま
●ほとけさま
●おじぞうさま

【読み聞かせ】

荒々しい口調の地獄の鬼たちやえんまさまとは対照的に、天国のほとけさまたちは、ものごし柔らかい関西弁になっています。このあたりをうまく、言い方、声の質、声の大小を変えて読んであげれば、子どもたちに大ウケするのは間違いなし!

【日本語クラスでは】

僕はカナダはトロントの日本語継承語学校で、日本をルーツにもつ子供たちに日本語を教えていますが、この「じごくのラーメンや」をテキストに使いました
(『じごくのラーメンや』を日本語クラスで使ってみた例)

ラーメンはここトロントでもたいへん人気が高く、日本語の勉強嫌いな子どもたちでも、すんなり物語に入ってくれました。

絵本に出てくる語彙は、難しいものもありますが、絵がよく物語を語っていて、音読もしっかりやってくれました。
クラスでは「キャラ読」といって、キャラクターごとに読み手を替えて、みんなで読みました。

ご家庭でも、お父さん、お母さん、お子さんと読み手を替えていっしょに音読するのは、いかがでしょうか?
とっても楽しい家族のひとときとなるのでは⁈

【語彙20】

あっという間
地獄、天国、むかえ、ため息、におい、ごほうび
大人気
高笑い、降参、約束、出前
迫る/迫られる、沸く、押し寄せる、ひっくり返る、負ける、届く/届ける
辛い、忙しい

お子さんがお父さんといっしょに読んでくれたなら、
お昼はいっしょにラーメンを食べに行きましょう!

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