イランの新年祝い

娘のピアノレッスン中、パパ友のイラン人と話す。イランでは明日(3/20)正月(春節)の祝日であり、ペルシャ語で「新しい日」を意味する「ノウルーズ(Nowruz)」と呼ばれるそうだ。日本でいう春分の日に新年を迎えるという世界でも非常に古い歴史(3000年以上)を持つ祝祭らしい。

イランでは公式な祝日であり、春の訪れ・自然の再生・新しい始まりを祝うお祭りだという。

この新年までに家の隅々を「大掃除(Khaneh Tekani / ハーネ・テカーニー)するという。これは「家を揺らす」という意味で、年末に家の中を隅々まで徹底的に掃除するという。

また、Čahār-šanbe-sūrī(チャハールシャンベ・スーリー)と呼ばれる新年前日の火曜日の夜に行われる行事がコミュニティの大きな賑わいをみせるという。これは、庭や路地で焚き火道を作り、災いを焼き払い、健康をもたらす意味の言葉を唱えながら、火の上をピョンピョン飛び越えるという。

日本の方はお気づきだと思うが、新年前までに「今年の汚れ、今年のうちに」と大掃除をするのも日本の年末風景だし、火の上を歩くというのは、昔の修験道者の火の上を歩く修行とそっくりだ。イランでは、これらは「穢れをはらう」という精神的な意味があり、行事の意味まで日本の神道とそっくりだ。

新年は、ハフト・スィーン(Haft-Seen)と言われる飾り付けがなされる。ペルシャ語で「S」で始まる言葉で7つの縁起物が並べられる。

  

⑴Sabzeh(麦や豆の新芽) 再生・成長の意

⑵Seeb(リンゴ) 美しさ・健康

⑶Seer(ニンニク)健康・薬

⑷ Serkeh(酢)忍耐・年齢

⑸Senjed(グミの実)愛

⑹Samanu(小麦のペースト)豊かさ・力

⑺Somāgh(スマック)日の出・希望

これらと一緒によく飾られるものとして、鏡(明るい未来)、金魚(生命)、キャンドル、コイン、ヒヤシンスの花などがあるそう。

 新年が明けると、まず年長者の家を訪ね、次第に親戚・友人宅を回る。子供には現金をあげるという。日本の正月のお年玉とそっくりだ。

「日本の新年はどう祝う?」と聞かれ、年末の大掃除、おせち料理、お屠蘇などをGoogleのイメージを見せながら話した。

一番驚いたのが、イランは1979年の革命でムスリム宗教国家になったが、ゾロアスター教に基づく国民的行事が今も行われていることだ。

ゾロアスター教は実は最古の啓示宗教と言われていて、ユダヤ教やキリスト教にも影響を与えていると言われている。自分達の宗教的祖先かもしれないイスラエルとアメリカがイランを攻撃しているのは何とも言い難い感がある。

イラン人の友人は嬉々としてイランの新年の祝いノウルーズを話してくれて、今起こっているイランの戦争の話は全くしなかった。かれは歴史も政治も好きで、戦争の話は先日もしたが、今回は全くしなかった。全ての世界には当然ながら生活があり、苦しみがあり、そして祝いがあって喜びがある。そんな当たり前のことを、喜び溢れる彼の目を見て、改めて感じた。

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伝統の意味

アベマのこの議論は、一見すると馬鹿馬鹿しくみえて、なかなか考えさせられるものだった。

日本の至るところで男性器や女性器を木彫りにしたものを神輿に乗せてお祭りするものが各地にあるそうですが、SNSなのでは否定的な意見があるという。令和の時代にそぐわないとか、卑猥だとかいうもの。僕は、これは面白いリアクションだと思った。

なぜなら、江戸時代の日本人は、性にとてもオープンで、混浴文化もあったし、出版文化による春画の氾濫や、公衆の面前で性器をみせることもあったらしい。そこへ幕末期、キリスト教価値観を持つ欧米人がやってきて、江戸時代の性に開放的な文化を忌み嫌っていたのを、明治政府がなんでも欧米化するのが正しいということになって、本来、性にオープンだった文化が禁欲的価値にシフトしていった経緯を知ってるからだ。

現代の若者は下ネタが嫌いだったり、コンプラとかセクハラ意識が高いからなのか、性を社会の表面へ露呈することを嫌い風潮があるらしい。長年、オヤジ・オッサン企業文化の中で、女性たちは虐げられてきたので、コンプラの風潮が強まるのは大切だとは思う。

しかし、過度に性を社会的に隠蔽したり抑圧したりすればするほど、ポルノやレイプ、小児性被害が増えるような気もする。

僕は、こういった性開放文化は守るべきだし、自分の息子娘にも、なるべく性の話はオープンにしている。当動画の議論の中でもある、少子化対策にもなる、といった分析は興味深い。

江戸時代は、十二分に文化が熟成していて豊穣だったところへ、産業革命を経て社会構造が機械化され合理化された欧米人がやってきて、「江戸の文化は貧しくて卑猥だ」とレッテルを貼った。しかし、ほとんどの訪日欧米人はこうも記している。

「日本人は我々より貧しくて非合理的だが、どの道も恐ろしくキレイで、誰もが幸せそうに見える」と。

文化の諸相は、現代人の価値観からのみでジャッジするのは、よほど危険で慎重にしなければならないと思う。なぜその伝統が今日まで継承されて来たのか。その伝統は、惰性なのか。古い旧弊なのか。非合理なのか。企業文化では惰性だったり、古かったり、非合理的だったりしますが、今回取り上げられてあるような、何百年も続くような祭りなら、何かしら意味があるはず。日本は、欧米列強に押されて、江戸から明治へ様変わりしていった中、欧米的合理主義、キリスト教的価値観に衣替えし過ぎた。日本人は日頃、こういったニュースを見聞きして、自分が正直に思ったことを、歴史に照らしあわせて考え直してみる、といった作業が必要かもしれない。われわれ日本人は思った以上に自分の歴史や伝統の意味を知らない。なぜ我々はポイ捨てを悪と思うのか。歴史と教育と神道的価値観がそこにはあると思うのだ。

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レンタル・ファミリー

先週末、家族4人で映画『レンタル・ファミリー』を見た。アメリカ中年男の視点から、日本の文化をコメディータッチに描きながらも、大東京に住む孤独と癒しを描いた大名作だと思う。子供2人は笑いながらケロッとしていたけど、親2人はオエオエ嗚咽しながら見ていた。

主人公でアメリカ人のフィリップが異国日本で俳優としてさまざまなオーディションし、不遇な経験の中、レンタルファミリーサービス社の役者として、ウソの人生を演じながら、本物の魂の触れ合いを経て、その中から本当の自身の生きがいを探し当てる、という心温まるコメディーだった。

特にラストシーンは、日本文化の根幹を端的に表現していて、とても心動かされた。

日本では神社に向かって手を合わせて拝む。その崇拝の対象である神社の中には何があるかというと、何もない、がらんどうであることが多い。映画の中ではちょっと違うのだが、日本の神話でも、社会システムや町内会での回覧板や係周り持ちなど、日本文化の諸相には神社のように「中心」がないことが多い。

歴史上、平清盛、織田信長、大久保利通など、中央集権的な強力なリーダーシップを執った者は必ず滅ぼされる。むしろ源頼朝、徳川家康、東郷平八郎など、中心者は適度に権力を部下に分散して合議制にした方が上手くいく。日本の神話では、左右の神はアマテラスやスサノオのように語られるが、ツキヨミのような中心にいる神については全く語られない。故に日本の文化の根幹は「中空構造」である、と喝破したのは、ユング心理学臨床家の河合隼雄だった。

映画の話に戻ると、外国人と結婚して海外に住むと親にウソをつく娘、父親のいない少女、娘と理解し合えないボケ老人と、さまざまな家族の中で理解し合えない、本当を話し合えない、気持ちが通じないと、人口密度が最高に高い大東京で孤独に苦しむ人々。カウンセラーがまだ一般的でない日本で、レンタルファミリーというサービスが人々の孤独の受け皿となっている。そんな中で異国人である主人公フィリップがフェイクの家族を演じる中で、本当の魂のふれあいを経験し、最後には日本文化の根幹に触れて、深い文化的体験をする。僕の中では異文化理解というジャンルでは、ケビン・コスナーの『Dance with Wolves』を越えるくらい、『レンタル・ファミリー』は魂が揺さぶられた。大大大オススメ映画である。

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歴史は繰り返す。そして大国は何も学ばない。

歴史講師の茂木誠さんの歴史的視点は学びが多い。

アメリカ・イスラエルのイラン攻撃前にイラン国内で大々的なデモが起こっていましたが、このデモの裏でCIAかイスラエルモサドが深く関与していたと、茂木誠さんは見る。彼の見立てによると、中東で起こってきた民主化デモやクーデターの類いは、ほとんどは裏でCIAが深く関与してきたと見る。今回のイラン民主化デモは、現政権によって大きく弾圧され、たくさんの人が処刑されてきたという。弾圧は確かにあったが、死傷者の数は誇大報道されたと彼は見る。これはのちにアメリカ・イスラエルがイランに攻撃する大義を作ってくれるからだ。茂木さんは、今回のデモを見聞して、すぐさま1953年、イランで起こった対モサデグ首相デモを思い出したという。モサデグは、当時、イラン国内の石油利権がすべてイギリスに握られていたことに対して、石油国有化しようと議会にうった人物だ。すこぶる真っ当な意見だが、これを恐れたイギリスはアメリカのCIAに働きかけ、イラン国内にモサデグ首相の収賄事実をでっち上げ、大規模なデモを引き起こさせた。結果、モサデグ首相は失脚。イギリスのイラン石油利権は守られ、利権の多くをアメリカと折半したという。今回のイラン民主化デモも、イスラエルモサドによって焚きつけられ、すでにイラン核施設を撃破したアメリカを引き込み、最高指導者ハメネイ師殺害を成功させた。イスラエルにすれば、イランは最後の脅威だった。1953年のモサデグ首相失脚も、今回のイラン攻撃も、イラン国民を考えたものではなく、大国の思惑のみがある。歴史は繰り返す。そして大国は何も学ばない。

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歴史の浅い国家は歴史から学ばない

娘のピアノレッスンを待っている間、パパ友のイラン人にイラン情勢を聞いてみた。すると恐ろしく一筋縄ではいかないことがわかった。彼によると、産業や工業などのインフラや商業など、社会生活を営む全てのシステムが現体制によって成り立っていて、まるでマフィアのようであり、彼らはレジーム転換は願っていない。だから斬首作戦で国のトップを殺害したとて、国のシステムそのものまで力によって変更できないであろうと。ハメネイ師はすでにガンに侵されており、死を待つだけだったこと。また、ハメネイ自身は、核兵器を持つことはイスラム法に反することだという見解を出していたが、彼が死んだことにより、逆に核兵器を持てるようになったこと。そしてウクライナと同じく、核を持っていないと大国にいつやられるか分からないことが今回のアメリカ・イスラエル攻撃によって明白になったので、逆にイランはどうしても核兵器を持つ流れになるのではないか、ということだった。

そもそも、英露イラン支配に反発して、イラン民族主義者のレザー=ハーンが起こしたクーデターがもとでできたパフレヴィー朝は、その後、石油利権のためアメリカとイギリスに乗っ取られてしまった。1953年、英米石油利権に反発してイランの石油国有化を唱えたモサデグ首相はCIAによって失脚させられてしまう。1979年、アメリカの傀儡政権パフレヴィー朝を打倒するためにイラン革命が起こり、イランの現ムスリム宗教国家がつくられたのである。イランの現政権はまさにアメリカによって生み出されたようなものである。それを今回、トランプのアメリカが再度叩くことによって、さらなる混乱を生み出した。

戦争をしない大統領として、この部分だけはトランプを評価していたが、今回のイラン攻撃でトランプもアメリカ軍産複合体、あるいはネオコンに支配されたことがハッキリした。第二次世界大戦後、アメリカは恐らく世界で10回ぐらい戦争を引き起こしたが、どれも失敗に終わった。歴史の浅い国家は、本当に歴史から学ばないのである。

訂正(2026/03/08)

「1953年、英米石油利権に反発してイランの石油国有化を唱えたモサデグ首相はCIAによって失脚させられてしまう。」

➡︎英米石油利権ではなく、実際はイギリスのみがイラン石油利権を握っていたのですが、イギリスがアメリカに働きかけて、CIAがモサデグ首相転覆計画の一貫で、イラン国内でモサデグ反対デモを引き起こし、最終的には失脚させたということです。この成功を見返りにアメリカは、イラン石油利権の半分をイギリスから貰ったということらしいです。

イランの近現代史が学べる茂木誠さんのチェンネル↓

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【闘病記】③

翌日、ナースセンター横に移動になり、家族の面会が可能となった。すぐさま、妻のKariと妹のLindseyが来てくれた。本当に嬉しかった。嬉しさが堰を切ったように、Kariとは、いっぱい筆談した。

・男のナースの方が思いのほか優しいこと

・看護師が文化的背景によってなのか看護態度が全く違うこと

・自分一人でウォーカーで歩けたこと…などなど

本当に嬉しかったので、筆談しまくった。

そうこうしていると、個室に移されることになった。担当の看護師はとても若くてあわてん坊らしく、ベッドの角や部屋の方々にわが身をぶつけながら、ゴミも部屋中に散乱させながら慌ただしく動く。こう書くと悪い人のように聞こえるがさにあらず。とっても徹底した気道掃除を吸引機でしてくれたし、痛みを訴えると、すぐさま薬を用意してくれた。

病室には「ベッドに横になり続けるのはよくありません。最低でも30分はイスに座るようにしましょう」と書いてあったので、看護師に尋ねてイスに座るようにした。ところが僕にはたくさんの管という管がつながれてある。

鼻には栄養や薬供給の管、

咽喉には酸素吸入器、

右腕には点滴の管、

首と左腕と左太腿に縫合部からのドリップをとる管、

男性器には小便をとる管とパック、

両足右腕には血流を促すマッサージパッド、

まあ管という管が体じゅうに入り乱れていて、看護師の助けなしにはベッドからも起きられない状況。それでもイスに座らなければ、という想いが強くなってきた。「生きるぞ、よくなるぞ」という意志が強くなってきた証拠だった。

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【闘病記】②

目を覚ますとRecovery Roomというところにいた。手術患者が術後24時間はいる所みたいで、たくさんの看護師が患者たちのためにスタンバイしてくれていた。

口からの呼吸が難しいので、両鎖骨の真ん中あたりに穴が開けられ、そこに器具を取り付けて、酸素を肺へ直接吸入されていた。そして鼻から胃へチューブが通されており、点滴で栄養補給されていた。術後、大変だったのは、痰の絡みだった。もともと唾液量が多く、鼻炎アレルギー持ちなので、痰の出がとても多く、5分に1回は咳き込み、そのたび看護師に喉を吸引機で吸引してもらわないと、気道確保できず呼吸が困難だった。看護師は6時間ごとに代わるが、看護師によって吸引に関する考え方が違うのか、ある者は頻繁に吸引してくれ、ある者はほとんど吸引してくれず、気道が痰でふさがれ、咳で病床から跳び上がり、呼吸が止まるかと思った。こう言っちゃなんだが、カナダはたくさんの民族がいて、看護師の文化背景によって「看護するカルチャー」が違うのかもと思った。僕の狭い今回の経験から、アフガン、フィリピン、東アジア系の人は、微に入り細に入り、看護してくれた。

この間、僕は家族とも面会できなかったので、心配したKariが都度テキストで会話してきてくれた。上記のあまり看護してくれない看護師のことをテキストすると、妻はナースセンターに電話して伝言まで残してくれた。

「I love You, Ryu」

彼女の言葉が身にしみた。

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【闘病記】①

去る5月、舌癌を告知された。思いのほかアグレッシブで、癌は首のリンパにまで及んでいた。6月初めに10時間に及ぶ手術を受け、一時「声」を失い、自宅療養に入ってからうつ気味になったが、家族、なかんずく妻のKariに支えられて、気持ちも声もかなり回復し、つい昨日、手術部位すべての抜糸を終え、来週から放射線治療を受けることになった。

怒涛の日々だった。

癌は、舌から首のリンパにまで及んでいた為、顎から歯茎そして喉元にかけて真下に切り、そこから喉を横に切って、顎から喉を切り開き、舌、舌根、左首のリンパの癌部を取り出し、左手首から切り取ったものを舌根部に縫合し、左太腿から皮膚をとって左手首に移植する、といったものだった。

手術は成功だったらしい。

僕は執刀室のベットに横たわっていただけなので、何の努力もしていないが、目が覚めてからが奮闘の連続だった。

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①アニメ❷スタジオジブリ:宮崎駿の哲学

●プレゼンのきっかけ

日本のアニメというサブカルを紹介する上でかかせないと個人的に思っているのが「スタジオジブリ」のアニメ作品。なかでも一番認知度が高いのが「宮崎駿」監督でしょう。何度もリタイアしては現役復帰し、2013年上映の「風立ちぬ」の時も製作に5年かかったから、もう体力の限界、などと言って長編アニメーションを引退したと言っておきながら、2016年ごろにみごと(!)復帰、2020年現在進行形で「きみたちはどう生きるか」というファンタジー映画を作っています。鈴木敏夫プロデューサーによると、1ヶ月に1分間の動画ができる、つまり1年で12分間のアニメーションしか仕上がらない。もうすでに3年間費やしているので36分間の動画が作成完了。ということは完成まで少なくともあと3年はかかるという途方もない話。宮崎駿監督は現在78歳。なんというバイタリティー、なんという創作意欲でしょう。うちの継承語クラスで彼のことを紹介しない訳にはいかないでしょう。

では宮崎駿監督の何を紹介するべきか?僕は彼の創作意欲の源泉である「哲学」そのものを、映画の中から抽出して見せてみようと試みました。幸いにもYouTubeに「The Philosophy of Miyazaki」という上質な分析動画があるので、ここを踏み台にしてプレゼンを構成してみました。

●クラスの構成

①日本文化のプレゼン

ジブリアニメから濃厚に浮かび上がってくる宮崎駿監督の哲学。それを3つのテーマから見てみましょう。それは、

・自然

・女性

・平和

です。特に「トトロ」「ラピュタ」「ナウシカ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などの作品からこれらのテーマを追ってみましょう。

上の絵をクリックするとプレゼンビデオが視聴できます。

②新しい語彙

「善悪」「自然」「女性」「平和」「文明」「神」「災害」「尊敬」「共存」「汚す」の10個の語彙を導入。

「文明」「尊敬」「共存」などの抽象度の高い語彙も導入したが、テーマがジブリアニメなので、ビジュアルと英語を入れて、一発導入できたと思います。ビジュアルと生徒の母語のスキーマを利用すれば、難しい語彙も導入でき、サマリーではよりレベルの高い説明文を導入できる。語彙力が低いからといって、日本語の言語能力に合わせた幼稚な内容や文だけ使って授業しても、生徒の食いつきは低い。生徒の授業への食いつきを高めるためには、授業の内容がサブカルであることはとても重要です。内容への食いつきがあれば、使用文が少々難しくても、生徒はついて来ようとする。レベルにあった語彙導入および読解文の選択ではなく、「伝えたい内容」によって、サマリー文を作り、難しい語彙でもビジュアルで一発導入する。言語能力が伸びるのは「+α」の難しくも面白い内容がすべてだと信じています。

【語彙クイズ】

③サマリー

宮崎駿監督の映画哲学の中でも、一番の骨子だと僕個人が思っているものが、彼の次の言葉に凝縮しています。

「悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない」-宮崎駿

これは2008年に「ポニョ」を上梓したときの記者会見で放った言葉です。北米文化に根強い「善悪論」から完全に脱却し、日本の風土から醸成された彼の哲学は、彼の「自然観」に立脚しています。

「スタジオジブリ:宮崎駿の哲学」のサマリー

「 ジブリは、他のアニメと何が違うのでしょうか?

北米の子供向けアニメは、(善と悪)をはっきり分けた『ヒーローズジャーニー』という物語が多いです。一方、ジブリの宮崎駿監督は『悪人をやっつければ世界が平和になるという映画は作りません』と言っています。彼の考えを「自然」「女性」「平和」という3つのテーマから見てみましょう。

私たちは(自然)にあるものを利用して、今の(文明)を作りましたが、昔から日本には、自然には(神)が宿るものと考えました。また台風や地震などの(災害)が多い日本では、自然をとても恐れました。このような考え方は、ジブリアニメにもたくさん描かれています。人間は今までさんざん自然を(汚し)、壊してきたのだから、自然のありがたさを感じ、もっと自然を(尊敬)しよう、そして、自然と人間が共に生きる(共存)が大事だ、ということを訴えてきました。

ジブリアニメは、ほとんど(女性)が主人公です。「ナウシカ」や「エボシ」などの強いリーダーや、働く女たちがたくさん出てきます。これは女性の強い社会が世の中を平和にするという考えがあるからです。

最後の(平和)というテーマは、いつもジブリアニメに出てきます。自然を壊して作られた、近代科学の恐ろしさや、非暴力の行動を、戦闘シーンで描いています。また、戦うシーンのない戦争映画「風立ちぬ」では、技術とは美しくあるべきだ、ということを強調しています。

「自然」と共存しようとする「女性」のリーダーシップが世界を「平和」にする、これがスタジオジブリの作る映画なのです。」

【サマリー】
【サマリークイズ】

④新しい漢字

「自」「然」「女」「性」「平」「和」の6つの漢字を導入。

まさにプレゼンの3つのテーマの語彙を導入漢字として採用しました。プレゼンから抽出されたターゲット語彙、そしてそのプレゼンの軸になるものからターゲット漢字を選ぶことは大切です。ただ教育漢字かどうか、つまり小学六年までに習う漢字なのかを見ることも大切ですし、使用頻度の高い漢字かどうかも見ていかなければなりません。

「自」・・・鼻の形から。中国でも日本でも、鼻を指して「じぶん」をあらわす。自分、自らなど。

「然」・・・肉、犬、火の形で、火で犬の肉をあぶることから「もやす」の意味と、音が同じ言葉の「そのとおり」の意味にも使われることに。当然、天然など。

「女」・・・膝をついて手を組む女の形から。女王、女の子など。

「性」・・・心、生の形で、生まれながらにして持っている心のことで、「生まれつき」「ものごとのさが」を意味した。性質など。

「平」・・・浮き草が水に浮いている形で、「たいら」を意味した。平和など。

「和」・・・イネと口の形で、イネがよく実り、人々が喜び合うことから「なごやか」「おだやか」の意味になった。調和、和室など。

●まとめ

うちのクラスの子らもすでにジブリ映画をかなり見て楽しんでいるようでしたが、今回のプレゼンのような宮崎駿監督の思想哲学からの分析というものを見聞きし、とても新鮮だったようです。物事の本質は、比較対照することでより違いが際立ち、何が本質なのかをうかがい知ることができるでしょう。その意味では、北米アニメとジブリアニメの比較から入った、ジブリアニメ論は、生徒たちにも充分響いたと実感しました。

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①アニメ❶アニメの進化

●プレゼンのきっかけ

去年、2ヶ月にわたって「漫画」文化について、クラスで勉強してもらい、かつ生徒たちにオリジナルのマンガを作ってもらいました。残念ながらコロナ・パンデミックの影響で、発表できる場を失いましたが、そのとき感じたのが、マンガ・カルチャーはとても深く、いろいろな角度で、生徒たちに学ばせるメリットがあるなあ、としみじみ思いました。その漫画の姉妹である「アニメ」もやるっきゃないなと思い、9月から今年一番のテーマに掲げ、3回シリーズでやってみようと思いました。

●クラス構成

①日本文化のプレゼン

英語で「Anime」と言えば、日本のアニメーションだとわかるくらい、欧米でも認知度が高くなってきた日本の「アニメ」。Netflixでもジブリ映画を始め、続々と日本のアニメがアップされてきました。日本のアニメは100年ほどの歴史ですが、調べてみると、いろいろな影響を受けてきたようです。今回のプレゼンでは、7つのポイントから、アニメの進化を見てみました。

プレゼン①アニメ❶アニメの進化
絵をクリックするとYouTubeへジャンプします。

②新しい語彙導入

「進化」「戦争」「物語」「影響」「東洋」「日常」「原作」「映画」「大人」「心理」の10個の語彙を導入。

【語彙クイズ】

難しい語彙になればなるほど、言葉の定義やコンセプトを伝えるのが困難になりますが、ビジュアル主体のプレゼンなら、テーマごとの文脈(コンテキスト)そのものから語彙を導入できるのがメリット。なので語彙を導入するときのビジュアルを選定するのに時間をかけます。絵を見て一発でターゲット語彙が理解できるように努めます。グーグルのイメージ検索を使って、文脈にあった語彙のイメージを選ぶ。しかし、ここにある「影響」という抽象語なら、思いきって英語の言葉をのせ、定義づけしてしまう。語彙を導入するときは、ビジュアルを選定する「ねばり」と、あっさりと英語で提示する「あきらめ」が肝心ですね(と自らをなぐさめる)。

また、語彙導入時、あるいは導入後、生徒たちに、新しい語彙の意味を言わせる訓練も重要だと思います。例えばここにある「日常」という言葉の意味を、日本語で頑張って説明させる。これはメタ言語(metalanguage)といって、ターゲット言語の能力を上げさせるのにとても重要です。

③プレゼンのサマリー

「アニメの進化」のサマリー

「日本のアニメはさまざまな(進化)をしてきました。

まず(戦争)に大きな影響を受けました。戦時中はプロパガンダとしてアニメが作られ、戦後はアニメや漫画の(物語)に強い影響を与えました。さらに、ディズニー映画の(影響)を強く受けた日本では1956年、(東洋)の映画、という意味の、東映アニメーションが作られました。一方、漫画の神様とよばれた手塚治虫が、虫プロダクションを作り、日本初のテレビアニメシリーズ「鉄腕アトム」を作って、子どもたちを夢中にさせました。1969年に「サザエさん」がテレビに出ました。これは50年以上も続いているアニメで、家族の(日常)を描いていて、今でも人気があります。1980年代になると「STAR WARS」の影響を受けたアニメは「宇宙戦艦ヤマト」や「ガンダム」「マクロス」など、宇宙やメカをテーマにしたアニメがたくさん作られました。

日本のアニメは、そのほとんどが漫画が(原作)です。特に少年ジャンプという漫画雑誌に出された「ドラゴンボール」「キン肉マン」「聖闘士星矢」「北斗の拳」などの漫画は、次々とテレビアニメとして作られ、今だに高い人気があります。1990年代になると(映画)としてのアニメが多く作られました。スタジオジブリの作品や「アキラ」は今や世界的に有名です。

最近は(大人)も楽しめるアニメが多く出されています。なかでも「Ghost in the Shell」や「エヴァンゲリオン」が人気で、心の苦しさや葛藤など、人の(心理)まで描いています。」

【サマリークイズ】

④新しい漢字

「進」「化」「原」「作」「映」「画」の6つの漢字。

「進」・・・之(しんにょう)と小鳥の形からで、小鳥が地面をスタスタ「すすむ」姿からできた字。行進、進学など。

「化」・・・人べんと死んだ人の形から、生きていた人が死んでしまって姿が「かわる」イメージから、「ばける」などの意味。化石、化け物など。

「原」・・・崖と泉の形からで、水が湧き出てくる「もと」という意味と、水が流れる「げんや・のはら」も意味した。原因、野原など。

「作」・・・人べんと作りかけの家の形で「つくる」をあらわす。作文、動作など。

「映」・・・太陽(日)と立っているえらい人の形で、えらい人が日の光で照り映えるというイメージから「光りかがやく、うつる、うつす」を意味した。上映、映すなど。

「画」・・・田んぼに境い目をつけた形からで、物事を「くぎる」「しきる」の意味になった。そこからさらに、上手にくぎって描かれた絵も意味するように。計画、画家など。

●まとめ

語彙の導入の説明でも書きましたが、言語学習がメインのプレゼンでは、あくまでもビジュアル資料が命です。アニメの「進化」という抽象語を言葉少なく概念提示するためには、ビジュアルで一発で理解させられるようなイメージを見せなければなりません。日本のアニメーションがどのような「影響」を受けてきたのか、という抽象語は、繰り返し繰り返しプレゼンの「文脈」で意味を浸透させられるような、シカケが必要です。そのためには「アニメ」という、子どもたちにわりかし受け入れられやすいテーマを選ぶことが大切ですし、日本文化をも学べる内容選定も重要になってきます。教科書的な語彙導入は学習意欲を刺激しないでしょう。その意味では、サブカルチャーを語学学習の教材に選ぶことは、とても意義のあることだと実感しています。

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